【特集】InnoHub活用事例インタビュー|カイテク株式会社 受賞後の軌跡とInnoHubによる支援
ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト(JHeC)2020 アイデアコンテスト部門でグランプリを受賞されたカイテク株式会社について、グランプリ受賞後約2年が経過し、同社のその後の軌跡と、InnoHubによる支援を通じた効果についてご紹介します。
この度は、カイテク株式会社代表取締役 武藤高史(むとう たかふみ)さんにお話を伺いました。
目次
カイテクの事業について教えてください。
「超高齢化社会の日本を成功に導く。」をビジョンに掲げ、介護ワークシェアリングサービス「カイスケ(特許出願済み)」を事業展開しています。人材不足が叫ばれる介護業界において、「介護施設」と「有資格者介護職」をつなげることで、安定した施設運営を可能としています。必要な時にいつでも、即戦力のワーカー様に力を借りられると好評を得ています。
JHeC2020に参加された時点での事業ステージと受賞後の変化について教えてください。
グランプリを受賞した時期は、介護ワークシェアリングアプリ「カイスケ」を、まさにローンチしたタイミングでした。グランプリ受賞から2年が経過しましたが、登録介護職約11,000人、登録事業所数は約700件まで増え、現在も規模を拡大中です。
JHeCの効果はありましたか。
グランプリを受賞したことが各メディア媒体で紹介され、「カイテク株式会社」という社名、「カイスケ」というサービス名の知名度が一気に上がりました。更に、JHeCは経済産業省が主催しているコンテストということもあり、箔が付いたように感じています。具体的には、顧客獲得、人材採用、社員のモチベーション、ネットワークの4つの点で、グランプリ受賞の効果がありました。
顧客獲得
我々が事業展開しているヘルスケア領域は、基本的に医療保険と介護保険で成り立っています。近年、保険適用外のサービスも増えてはいますが、公的な制度を前提とする産業構造に変わりはありません。限られた財源の中でサービスが提供されている世界なので、新参者のスタートアップが入っていって認知度を高めたり信頼を獲得したりするのは容易ではない。だから「カイスケ」が経済産業省主催のコンテストで評価を頂いたということは介護事業者様への良い訴求点になっています。
他のピッチコンテストと異なり、国からの評価頂いたという事実は、介護業界向けには大きい意味を持っていると感じますし、セールスの際にグランプリを受賞したことを信頼度できるサービスの1つの証明として、存分にアピールしています。お客様にグランプリを受賞したことを伝えると、まず驚かれますし、セールス活動にプラスに働いています。
人材採用
人材採用という観点でも、グランプリ受賞はプラスに働いています。我々としても自信を持って、応募頂いた方に事業をしっかりアピールできるようになりました。スタートアップにジョインするというのはある意味勇気がいることです。応募頂いた当人だけでなく、ご家族や関係者に対しても、グランプリ受賞というのは当社が社会的にも意義がある企業として期待して頂いていることを形として示すことになっているのではないかと思っています。
社員のモチベーション
一般的にスタートアップは事業継続について不確実性が高いので、社員は不安に駆られます。JHeCという大きなコンテストでグランプリを受賞して会社が評価されたことで、働いている社員自身も評価されていることを実感でき、社員からも「モチベーションが上がった。」と聞いています。大企業だと、自社が何かを受賞しても社員にとっては、実感がなかったりするかもしれませんが、当社は社員7人(2022年3月時点)の規模なので、社員1人1人のモチベーションの向上度合いは高かったと思います。
一方で、グランプリを受賞したことは、いい意味でのプレッシャーにもなっています。ピッチの場で、経済産業省の方々、審査員の方々、企業・参加者の皆様に対して、今後のお約束をしてグランプリを頂いたので、「やり遂げなければならない。絶対やり遂げる!」という気持ちも強くなりました。
ネットワーク
介護・福祉系の複数の企業からグランプリの受賞を機に問い合わせ頂きました。また同じ領域で日々奮闘しているスタートアップ経営者との接点も増えました。グランプリの受賞が1つのきっかけになり、確実にネットワークの輪はひろがっています。
今年度InnoHubでは過去のJHeC受賞者に対して伴走支援という新しい試みを始めました。支援を受けてみた感想を教えてください。
今年はJHeC受賞者への支援を始められたということで、全般的に我々スタートアップには有り難い取り組みで、基本的にマイナス面はなくプラス面が多かったと思います。無料で支援を受けられるということもよかったです。
今後、介護業界で事業を広く展開していくためには、やはり自治体と連携していくことが重要になると考えています。今回の伴走支援の中では複数の自治体とおつなぎ頂き、意見交換の場を作って頂きました。実際に介護事業や介護人材確保の担当者の方から、自治体の課題などを伺い、また当社のサービスを知って頂けました。今後は具体的な形を探りながら、包括連携協定を締結して自治体とスタートアップが連携して、介護人材の不足を解決していくといった可能性も見えてきました。また具体的な連携まで至らないとしても、自治体とディスカッションできたので、自治体が運営する介護事業所などに対して課題感を理解したスタートアップとしてアクションが取れるようになると思います。定期的にInnoHub担当の方とディスカッションして、当社の事業に見合った自治体の選別に関する助言や、また自治体とのおつなぎの調整に尽力頂きました。その点でもプラス面しかありませんでした。
スタートアップ側としては支援を使いこなすことの難しさも実感しました。今回の伴走支援の中では自治体との接点を作ってもらったわけですが、その先のゴールを明確に持っておくと、より具体的なアクションにつながったと思います。
スタートアップとしてリソースの問題は常にあるというのも事実ですね。スタートアップとして「やりたいこと」と「やれること」があり、InnoHub伴走支援においても「できること」があり、具体的に何のアクションをするのか、InnoHub担当の方と試行錯誤しながら進めていきました。
今後の展望とアピールを聞かせてください。
JHeC2020の直後にコロナの感染が拡大し始め、世の中が大きく変わりました。当社も事業環境が大きく変わりましが、コロナ禍において事業拡大に向けて踏ん張ってきて、これからアクセルを踏む予定です。グランプリ受賞時より、比べ物にならない規模で事業展開を進めていきたいと思っています。これまでと、違う景色を見にいこうと日々動いている最中です。
今後、JHeCへの応募を検討されている方にメッセージをお願いします。
実際に参加してみてJHeCというのは、ビジネスに必要なヒト・モノ・カネ・情報に幅広くリーチするきっかけを得られる場所なのだと思います。ヘルスケア業界で様々な方や企業、団体の皆様からお力を借りる場としてとてもいい場所です。基本的に参加者にとってマイナスの要素がない、そう思います。もし皆さんがJHeCへの参加を迷っているのであれば、参加すべきだと思います。