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【特集】ベンチャー企業インタビュー【株式会社ウェルモ様】(後編)

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「違う文化を埋めていく」ために、お互い詳しく分かり合う

―「パートナーになる人は、医療業界についてきちんと勉強してほしい」という意見を起業した方から伺うことがあるのですが、反対に起業家側もファイナンスのことなど、相手について分かり合えてないと意味がないということですよね。

そうですね。立場やスタンスが違う中で相手を思いやるには知識・情報が必要で、相手の置かれた環境、それを形成する構造を知らないと同じ気持ちになれないので、「なぜこれをやっているのか」という専門性の理解もお互いにしないといけないと思っています。
私は投資家の方に最初は数時間かけて介護福祉業界のレクチャーをします。分かった上で参画して欲しいので、投資家の方にも細かく理解していただき、逆に私たちも細かく聞くので、お互い意見交換しながら深めていくということをやっていますね。

―大きな企業だと会社によって風土も時間の掛かり方も違うかと思いますが、そこも最初細かく聞かれるのでしょうか。

担当の方も苦労されるのが分かっているので、「うちが何をしたらいいか、誰に話したらいいか」など様々な観点でヒアリングをして相手の立場になって共同体として頑張っていく形です。担当の方に圧力をかけても仕方ないので、同じチームとしてやっていくというスタンスが大事ですね。

―ベンチャー側としてはビジョンを持っていることはマストでしょうか?

それがないと続かないと思うんですよね。そもそもベンチャーはめちゃくちゃ大変な上に、ヘルスケアは自由市場じゃない分、難易度が桁違いに高いので、そこを耐え抜くときに、「お金じゃない信用できるもの」をきちんと捉えておかないといけない。それがビジョン・ミッション・コアバリューで、「こういう世界をつくっていきたい」ということにコミットしていくのが大事だと思います。
ベンチャーだと特に不信によるコミュニケーションコストが大きいですが、数字だけ見ると日和見主義になって、不信に陥っていきます。
加えてベンチャーに限らずですが、もうすでに数字を元に一致団結するという時代じゃなくなっていると思って、「何がしたいか」という内発的な動機が結集できるビジョンがないと数字が付いてこないときに折れてしまう。「何の為のワンチーム」なのかということをピン止めすることが非常に重要だなと思っています。
大なり小なりうまくいかない「不信」が起こるのは文化ギャップを吸収するコミュニケーションが出来てないという話だと思うので、上段にあるビジョン・ミッションを共通言語にしながら摺り合わせしていくということが重要かなと思いますね。

―「違う文化を埋めていく」ことはすぐに出来ることじゃないようにも感じてしまいますが・・・

第一歩は「相手の立場に寄り添う」という非常に簡単なことで、そこのスタンスを間違ってはいけないと思います。相手の立場に立って物事を考える、感じるというのが根幹です。
「人の生活や病気を治したい」と考えている人の多いヘルスケア領域の人はそのことができるはずなので、そういった意味では人とつながりやすいし、横のつながりやオープンイノベーションもやりやすいのでは、と思います。

業界全体での社会課題の解決に向けて

―横のつながりという意味でいうと、ある意味競争相手でもある業界の方々と仲良くやっているのは少し不思議な感覚もあります。

そもそも弊社一社で国民全てを救えると思っていなくて、「手分けをしてやろう」という発想なので、競合他社とも仲良くさせてもらってます。ヘルスケアって人の命が懸かっていたりするじゃないですか。社会課題やそれで苦しい思いをしている人が今現在もいる状況を想像すると、個々で自己利益に固執したり、喧嘩している暇もないと思うので、目線を広げてあげることが重要かなと思っています。
ヘルスケアに来る人たちは社会課題領域に興味を持っている人が多いと思うので、InnoHubでもそういったところに視座を上げて取り組んでもらえると面白いと思います。

―理想主義といわれるかもしれないですが、InnoHubサポーターも皆でスクラムを組んでやっていくことに賛同いただけた方に参加いただいているので、そういったメッセージをいただけてありがたいと思いました。

今回経産省さんがこういう取組みをされているのは本当に有難いと思っています。ヘルスケアの難しいところは自由市場じゃないところだと思います。だからこそ国の差配は非常に大事で、例えば、介護×テクノロジーに市場を作るぞ、という気持ちを国がもってくれて、参入する企業がどんどん増えたら、「竹槍介護」と自分はよく講演で言いますが気合いと根性だけではなく道具や技術を活用することで様々な地域で様々な課題が解決するのかなと思っています。そこは是非を旗振ってもらえたらなと。
官製市場であるヘルスケアに参入する難しさとして国の仕組みや議会の仕組み、予算のつき方・・・といったルールの複雑性や市場へ製品を出せる時差があると思うので、ヘルスケアの理屈を知る一歩として、例えば「こういう社会課題に対して持っている技術がどう適用できるか」をInnoHubが相談相手になってくれたらと思います。他業界からヘルスケア領域に入る間口が広がれば、イノベーションも非常に加速しますし、すごくいい機能になるのではないかと。僕も前職が大企業向けのITコンサルだったのですごく苦労しました。、もしInnoHubが立ち上げのときにあったら一発目に相談していますね。

―そういった立ち上げから今に到るまで、どういうステップを踏まれてここまで来られたのでしょうか。

まずは自治体の人ときっちりつながって実績を作って、現場の人が喜んでいるという事例を作ることだと思います。
福岡市が市長含め新しいものを積極的に取り入れるというスタンスがあったこともあり、縁のなかった福岡で起業しました。福岡市のカルチャーとしても新しいものを受け入れる文化もあって、テストベッドとして良いだろうと。そして次は大きいところでやらないと注目してもらえないので、関東に展開して横浜市という一番大きい自治体で証明しますというスタンスでした。
会社起こすときから逆算して一個一個積み上げてきたという形ですね。そうじゃないとロビイングしながらこの業界で続かなかったなと思います。

―ロビイングという観点で言えば、規制を受け止めるようなグレーゾーンやサンドボックスといった施策が出てきていますが、それ以外に必要なものはあると感じますか。

ケアテックの文脈で言えば、最大の問題は介護保険給付費においてIT投資を計算せずに給付費設計されていることです。官製市場である中でIT投資をしたくても出来ない給付費設計になっていることで、レセプト以外のIT企業がほぼ出現できない状態になっていて、これは人が減ると分かっているのに人の気合いでやりきる「竹槍介護推進」という意思決定を国がしている状態とイコールだと思っています。
良いものを作っても介護現場が予算がなく使えないという状況に陥ることは往々にして起こっていて、テクノロジーを提供するベンチャーと国が歩調を合わせる必要があると思っています。

―そういうことを国に言える環境になるだけでも違うということでしょうか。

弊社のようなベンチャー1社でマネタイズしながらロビイングに工数をかけること、所謂ボランティアし続けるにも限界があるので、ケアテックの会社が集まって声を上げるべきだと思っていて、そういう活動なんかもInnoHubでまとめてもらったら嬉しいなとは思っています。


いかがでしたでしょうか。
本質的な課題解決に向けて、オールステークホルダーで立ち向かっていくための大きなメッセージをいただけたかと思いますし、InnoHubの今後についても示唆をいただけたと感じております。
InnoHubでも、ご相談者の皆様、サポーター団体の皆様、アドバイザーの皆様、皆が一致団結していけるよう、今後も努めていきたいと思います。